私は吉本興業で働いたことはありませんが、同業他社の芸能事務所で15年働いてきました。芸能マネージャー同士って、実はライバルというより「一緒に働いている」という感じになって友達になったりするんですよね。
で、そんな中にも吉本興業のマネージャーがいたりして色々話を聞けるわけですよ。「うちこんなんですわ」とか「うわあ羨ましいなあ」という感じで。情報交換ってやつです。
そこで、この記事では「吉本興業に入りたいなあ」「でも辛い仕事だったらどうしよう…」と考えているあなたに吉本興業でマネージャーになった場合どうなる?を書いてみます。
もちろん、内部にいた人間ではないので不正確な部分もあるかもしれませんが、吉本興業でマネージャーになりたい!と思っているなら知っておいて損はないお話ですよ。
吉本興業のマネージャーが「きつい仕事」と思うこと
芸能マネージャーって事務所が違っても、現場に行くと何度も顔を合わせる機会って本当に多いんです。で、自然と話をしたり仲良くなったりして、お互いの事務所の内情とかを喋っちゃうんですよね。
私にも何人かの吉本のマネージャーの知り合いもいて、いっしょに飲みに行ったりゴルフに行ったり。で、そんな中で外の人間が感じた「吉本興業のマネージャーのここが辛い」という点をご紹介します。
吉本興業に入社するのに学歴が必要できつい
かつては芸能マネージャーが大卒というのが珍しいという時代がありました。ちなみに私は大卒なのですが、マネージャーになった当初「大学まで行ったのに…」などと揶揄されることもよくありましたね。
そんな芸能マネージャーの仕事ですが今は大卒者は珍しくない時代になりました。多くの芸能事務所は応募条件を大卒にしてはいないのですが、吉本興業は別。新卒採用は大卒の総合職に限られている状況です。吉本興業の採用ページには「大卒」「高卒」「中卒」と別れて募集要項が掲載されていますが、高卒の場合ハローワークを当たってくれ、中卒に至っては募集なしという状況です。
一流大学以上じゃないと書類選考で弾かれるという足切りはないようですが、今の吉本興業では大卒で総合職に入らないと芸能マネージャーへの道は閉ざされている状況です。しかもこの合格率も相当高いという話です。吉本で芸能マネージャーになるのは相当ハードルが高いようです。
契約社員でマネージャー専門職、という方法もあるのですが、応募条件が「マスコミ・エンタメ業種経験者」というくくりがあるので、他の芸能事務所でマネージャー業を経験してからじゃないと難しそうです。
担当タレントの数がえげつなくてきつい
多くの芸能マネージャーが担当するタレントの数って2〜3人程度っていうのが普通なんですよね。もちろん、チーフマネージャーになって現場マネージャーが部下として何人か付けば10人近くのタレントを担当することもあります。
でも、吉本はそんなの関係ないぐらい担当タレントを任されます。最低でも7〜8組の芸人を担当するなんてザラ。大御所芸人を担当している人でも4〜5組の芸人の担当を任されます。
吉本のマネージャーが持つスケジュール帳は何枚もあり、いつも頭を抱えて「あーでもないこーでもない」とやっていたのを今でも頭に思い浮かびます。
担当している全員が売れっ子の芸人というわけではありませんが、これだけ多いとスケジュールの調整だけで手一杯。ダブルブッキングや裏被り(同時間帯の番組に同時に出てしまうこと)をしないようにするだけで頭がパンパンになるくらいです。
一度聞いてビビったのは、各マネージャーが忙しすぎて全員のスケジュールが揃う深夜0時からマネージャー会議をやっているという話。もちろん今ではそんなことはないみたいですが、それくらい激務なのでしょう。
定期的に担当替えがあることがきつい
多くの芸能マネージャーは、担当タレントからNGでも出されない限りずっと担当していきます。タレントと信頼関係を築くことができれば10年以上担当することも珍しいことではありません。
でも、吉本興業は3〜4年など定期的に担当替えがあります。一部の大物芸人の担当マネージャーは別ですが、基本的に定期的に担当が変わります。
せっかく信頼関係を築くことができた、仕事が面白くなってきた、こんな場合でも会社命令で違うタレントのマネージャーに異動することになります。聞いた話によれば、芸人やタレントとなあなあの関係になるのを防ぐのが目的とか、仲良くなりすぎて一緒に独立をさせるのを防ぐためとか。
また、担当替えではなくマネージャー以外の仕事に配置転換されることも。例えば劇場の支配人だったり番組制作に異動されたりする可能性も少なからずあります。
マネージャー希望で入社しても、マネージャー以外の仕事を任されることは覚悟しおかないといけません。
大会社特有の派閥が出世に影響することがきつい
かつては東証一部にも上場していた吉本興業株式会社。どこに出しても恥ずかしくない規模の大きな会社です。それゆえに大会社特有の「派閥」があることも覚えておいて損はありません。
有名なところでは現経営陣は元々ダウンタウンの担当マネージャーだった人ばかり。ダウンタウン派閥みたいなものです。
でも、大会社なら大抵は派閥的なものはあるものです。学閥などは今でもよく聞く話です。どうしても吉本興業でトップに上り詰めてやる!という考えを持っていないならそんなに気にしなくても良いかもしれませんね。
外のマネージャーから見て吉本が羨ましい3つのこと
もちろん、吉本興業以外の芸能事務所のマネージャーから見て「羨ましいなあ」と思うようなこともあります。ここでは、私が「いいなあ」と思った吉本のマネージャーが羨ましいことを3つご紹介します。
タレントの送迎する必要がないこと
吉本興業所属タレントは基本的に自分で移動します。
- タクシーで現場入り
- 自分の車を自分で運転して現場入り
この2パターンです。
なので、マネージャーが車を運転して迎えに行き、仕事が終わってから送ることもありません。現場集合現場解散、これが吉本のマネージメントスタイル。「時間通りに現場に来てくれるか?」という不安になる点がデメリットですが、送迎がない点は羨ましいの一言。
ロケ現場などで「俺の車、駐車場から出しといて」という頼まれごとをされることもあるので、運転免許を持っているに越したことはないのですが、基本運転することはなし。
車の運転に自信がない場合は吉本興業のマネージャーがおすすめかも。
ただ、遅刻癖のあるタレントの担当になると毎日がハラハラドキドキな生活になるかも。
自前の劇場が全国にあるから仕事を埋められる
吉本興業以外の芸人事務所のマネージャーが口を揃えて言うのが「自前の劇場があること」です。やはり芸人は舞台で場数を踏んでナンボという世界。M-1などの賞レースで活躍するにはお客さんの反応を直に感じられる劇場での経験は大きいのです。
賞レースで上位に行くのが吉本芸人ばかり、というのはやはりこの点が大きいんですよね。
でも、他の芸人事務所の場合だと自分で小劇場などを手配して〜チケットを売って〜舞台スタッフを雇って〜などやることが満載。一方、吉本芸人の担当マネージャーの場合
- ちょっとここ時間空いたから舞台入れよ
- 新宿が空いてないから渋谷で入れよ
- この日スケジュール埋まらなかったから劇場入れよ
などが可能なのです。これは非常に羨ましいお話です。
やっぱりマネージャーはタレントのスケジュールを埋めてナンボの世界ですもの。
「やってみなはれ」の精神が羨ましい
吉本興業の創業者である吉本せいとその弟林正之助は「やってみなはれ」という言葉をよく口にしていました。これが今でも吉本興業の基本理念だったりします。
簡単に言うと「お金になると思うなら挑戦してみなさい」という精神で、お笑いなどのエンタメ事業以外でもどんどんチャレンジできる風土があること。
例えば、沖縄国際映画祭みたいな大きなイベントをやったり、最近ではNMB48やJO1などのアイドルを作ったりとお笑い以外でも挑戦したりできます。
昔、吉本にいたSさんという方は、ファミリーマートとコラボして芸人のスイーツを作ったりしていましたね。こういうのも会社命令とかではなく、自発的に「こんなんやりたいんですけど!」みたいなところから始まったりしたわけです。
もし、社会人経験者で中途採用を考えているなら、前職と芸人と結びつけて「こんなのできますよ!」みたいなことをアピールできると効果的かもしれませんね。
【番外編】吉本マネージャーの「きつい」けど「羨ましい」こと
現在の芸人が目指すのは
- M-1グランプリ
- キングオブコント
- R-1グランプリ
- THE W
などの賞レース。優勝すれば一夜にしてスターになれる優勝を目指して、日々芸人さんたちは稽古を積んでいます。マネージャーも同じく自分の担当タレントが少しでも上位に行けるように、ネタを見たり提案したりという日々を送ります。
そして、念願叶って自分の担当芸人が賞レースで優勝でもしたら、その喜びは計り知れないほどの喜びです。社内での評価も期待できるでしょう。
でも、優勝芸人のマネージャーは優勝が決まった瞬間から地獄が始まります。翌日以降のスケジュールを確保しようと、各番組のスタッフから着信が止まらなくなります。「寝る暇がないほどの忙しさ」をまるで絵に描いたような生活になってしまうんですよね。
M-1グランプリを優勝した某芸人コンビのマネージャーのお話では、携帯の電波が入らないスタジオ内に10分ほどいただけで留守番電話が8件入っていた、なんていうことも。携帯電話をぶん投げたい、とぼやいていたことを今でも憶えています。
まとめ
吉本で実際にマネージャーをしている人から話を聞いたり、そばで働いている彼らを観察していると
- 担当タレント数がえげつない
- 入社するのがきつい
- 定期的に担当替えがある
- 派閥が出世に影響する
という部分がきついなあと思う部分でした。とはいえ、やはり日本を代表する芸能事務所。それをカバーするくらいの羨ましい部分があります。
- タレントの送迎は不要
- 全国各地に劇場をもっている
- 「やってみなはれ」の精神でチャレンジできること
やはりこれらは側から見るマネージャーからするとかなり羨ましい点。確かに吉本興業はマネージャーとして働くにはきつい環境や体制にあるかもしれませんけど、それ以上に夢がある会社に見えました。
芸能マネージャーになるための有利な資格は?
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